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デュポン分析から学ぶ財務分析の手法~デュポン分析と資本効率分析~



要約

  • デュポン分析はROEを純利益、総資産回転率、財務レバレッジの3要素に分解する。
  • 資本効率の指標としてはROICが最もオススメ。

導入

 近年、日本でもROE(株主資本利益率, Return On Equity)を意識した経営が増え、ROEに対する注目度も上がっています。ROEの分析に当たり、最も有名なのがデュポン分析というものです。デュポン分析はROEを3つの要素に分解し、それぞれの要素を分析するというものです。今回は財務諸表の項目を用いますが、それぞれ説明を付けているので基礎的な会計知識でも読めます。

 会計知識/財務諸表の見方は以下のページにまとめています。

 

デュポン分析(Dupont Analysis)の基本

 この名称は世界有数の化学会社デュポンに由来します。デュポン式(Dupont Formula)とも呼ばれます。まず、デュポン分析の基本となるROE自体の式は

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です。純利益とは会社の最終的な利益であり、株主資本とは株主に帰属する会社の資産額です。また、会社の利益は、会社の所有者である株主のものになります。つまり、ROEとは株主が投下している資本に対し、いくら利益を上げたかという資本効率の指標になります。

 また、純利益では一時的な影響が多いため、企業の真の収益性を測るため、EBITを純利益の代わりに用いることもあります。EBITに関してはこちらのページ参照

これをさらに3つの要素に分解したデュポン分析は

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とROEを定義しています。売上高とは会社の売り上げのことで、総資産とは会社が持つ全ての資産額になります。それぞれの分数が何を意味しているかというと、

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を表しています。

 それぞれの指標からわかることは以下の通りです。

  1. 純利益率...利益率が高いければ、おいしいビジネスをしている、もしくは競争優位性があることがわかります。
  2. 総資産回転率...回転率が高ければ、効率よく資産を使いビジネスをしていることがわかります。
  3. 財務レバレッジ...財務レバレッジが高ければ高いほど、借入を多くしていることがわかります。

 どの指標も、業界によって高いのか低いのかは変わります。そのため、これらの指標を用いた比較は同業内で行うことが推奨されます。

 基本的に純利益率、総資産回転率は高ければ高いほど、良いです。一方で財務レバレッジに関しては高すぎれば、倒産の危機が高まり、低すぎても借入を行うことで、より効率よくビジネスをすることが示されます。財務レバレッジが高すぎる、低すぎるかの分析はクレジット分析という財務分析の手法によってある程度検討を立てることができます。

 では、デュポン分析の各要素に分けて、財務分析の手法を紹介したいと思います。

資本効率指標

 まず、ROEのような資本効率の指標について紹介します。資本効率とは、会社が持っている資産を使って利益を生み出す効率のことです。資本効率が高ければ高いほど、会社は、会社の持つ資産をうまく活用していると言えます。

 また、財務分析をするにあたり、損益計算書の項目(売上高、売上原価、利益)と貸借対照表の項目(総資産、株主資本、負債)を分析する際は、貸借対照表の項目は前期と当期の平均を使うことを推奨します。これは、損益計算書が一年間での合計項目であるのに対し、貸借対照表はある一時点の財政状況しか反映しないため、資産や負債が急増すると正しく指標を計算できないからです。

株主資本、有利子負債の評価に時価と簿価のいずれを使うかの議論は財務状況分析にて扱っています

ROA(総資産収益率, Retun On Assets)

 ROAは会社の総資産額に対し、いくら利益を上げたかという指標になります。つまり、デュポン分析の最初の二項を掛け算したもので、以下の式で算出されます。

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 総資産は株主と債権者の2種類の出資者の所有物であることから、ROAはこの2者の資本を使って利益を上げる効率を示します。つまり、ROEが高くてもROAが低い場合は財務レバレッジをかけてROEを上げているだけとみることもできます。

ROIC(投下資本収益率, Return On Invested Capital, ROCE/Return On Capital Employed)

 ROIC(ROCEともいう)では投下資本に対し、どのくらい持続性がある利益を上げているかという指標です。投下資本とは、企業がビジネスを行う上で、ベースとなる資本のことを言い、それは有利子負債と株主資本の合計です。

 また、純利益では特別損失など一時的な勘定が含まれていました。そういった一時的な要因を取り除き、営業利益に税率をかけた税引き後絵業利益を利益として用います。従って、ROICの式は以下のようになります。

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 会社が、いかにうまく資本を用いてビジネスを行っているかはROICに着目するのが最適だと私は考えています。従って、会社の資本効率を測る上では、この指標の推移に着目しましょう。

 また、デュポン分析の式の最後に1/(1+D/Eレシオ)をかけることでROICになります。

ROE, ROA, ROICのまとめ

 結局のところ、資本効率の分析として用いるにはROICが最適だと考えています。ですが、企業がどの指標を、経営目標を立てる上で使っているかに合わせて指標を使う柔軟性も必要です。以下で簡単な例を作りました。

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 この会社は株主資本が純資産の全てで、1期目の内訳は株主資本5億円、負債1億円でした。また、負債の内5,000万円が有利子負債でした。1期目の営業利益は1億円、一時的な影響として2,000万円の損がありました。また、法人税率は30%です。

 2期目(Aパターン)では一時的な影響で5,000万の損が発生しました。するとROE, ROA共に減少してしまったものの、ROICは同水準のままです。なぜなら、ROICは継続性のある利益を利益として計算しているからです。

 また、2期目(Bパターン)では有利子負債を5,000万円を調達しました。このときROEは変わらず、ROA、ROICが変化しました。なぜならROEは株主資本に対しての資本効率しか測っていないからです。また、ROAが1%程度しか下がらなかったところ、ROICは2%程度下がってしまいました。

 次のページではデュポン分析の3項をそれぞれより詳細に分析する基礎的な財務分析手法について紹介しています。

参考書

  参考書として、業界本として有名な財務会計講義を執筆している著者の財務分析の本を掲載しておきます。

財務諸表分析(第6版)

財務諸表分析(第6版)

  • 作者: 桜井久勝
  • 出版社/メーカー: 中央経済社
  • 発売日: 2015/03/14
  • メディア: 単行本
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