要約
- 単利と複利の違い
- 様々な金利を決定する基準となる金利は短期金利、長期金利の2種類ある
- 基準金利を決めるのは名目GDP成長率
- 低金利時代の背景にあるのは日本銀行による金融緩和
- マイナス金利は住宅ローン大幅低下、保険料値上げの2つの影響をもたらした。
- トランプ大統領出現以降、財政出動がキーワードとなり金利が上昇する見込み
導入
トランプ大統領誕生をきっかけに、金融市場では一段と異次元金融緩和の終わりが意識され始めています。この異次元金融緩和が終了すると金利が大きく変動すると予測されます。金利の変動は金融市場はもちろん、住宅/自動車ローン、生命保険などに大きな影響をもたらします。特に、人にとって慎重かつ適切な判断を要求する大きな出費に大きな影響を及ぼすことから一般の人向けに金利が今後どうなると考えられるかを極力丁寧に説明します。
投資家はどんな商品を扱っていても金利に関してはきちんと知っておかなければなりませんが、一般の方も大きな出費と深い関連があることが多いため、きちんと理解をしておくことが大事だと思います。
長いページになりますが、かなり基礎的な内容から今後の金利の動向まで専門的な内容を扱っているので、見たい部分に目次を使って飛んでください。
金利の決まり方と重要性
金利とは
念のため、まずは金利自体いったいどのようなものかということから解説します。
まず、金利を説明するために必要な利子を紹介します。利子/利息とは、お金を貸した時に余分に受け取る/借りた時に余分に支払うお金です。つまり、100万円預金して、101万円に増えた場合、増えた1万円が利子と呼ばれます。図で示すと以下のようになります。
そして、本題の金利とは借りた/貸した額に対して"1年"で支払う/貰った利子の割合を指します。大事なのは、1年で支払う利子の割合というところです。なぜなら、お金の貸し借りの期間はケースバイケースで異なるからです。また、1年での利息の割合を金利として表示するのが業界の慣習ですが、1年ではない場合で金利を表示する場合必ずその旨が書かれています。
先程の100万円を預金して101万円に増える例を使いたいと思います。もしこれが、1年で増えた場合であれば1年で得た利子は1万円で、1万円÷100万円で金利は1%ということになります。
ですが2年で101万円に増えたケースであれば、2年で利子を等分すると1年で増えた利子は各年5千円です。すると、5千円÷100万円で利子は0.5%となります。このような利子の計算を単利での計算といいます。これと別に複利での計算方法があります。以上の説明を図で示すと以下のようになります。
単利と複利の違い
世の中の金利は基本的に複利です。そこで、先ほどの2年で1万円が増えた金利0.5%の例が複利であればどのようになるかを紹介します。
結論から言えば、2年後の預金は101万25円になります。では、なぜ先ほどよりわずかながら25円増えたのか解説します。これはなぜなら、1年経過時点に増えた5千円に対しても0.5%の利子がついたからです。つまり、2年目の利子の計算をする際に(100万円+5千円)×0.5%=5,025円となったのです。
まとめると、以下のようになります。
- 単利...最初の元本に対してのみ利息が付く。
- 複利...年が経つにつれ発生した利息と最初の元本の両方に利息が付く。
金利の変動が生活にどのように影響するか?
改めて金利がどのように一般の人の生活に影響を及ぼすかを紹介したいと思います。まず、金利が主に一般人の生活と接点があるのは大きく以下の3つだと思います。これらを金利商品と呼びます。
- 預金...銀行等にお金を預けているときに増える/貰える金利。(預金利率)
- 保険/年金...主に終身生命/死亡保険、個人年金保険で支払った/積み立てた保険料が増える/貰える金利。(予定利率)
- ローン...住宅、自動車などを購入する際にお金を銀行等から借りる際に払う金利。(借入利率)
以上の分類でわかるように、金利には大きく分けて1. 貰える金利と 2. 払う金利があります。つまり、金利が上昇した時は消費者が多くのお金を貰える保険や預金がお得になり、金利が低下した時は消費者がより少ないお金を支払えば済むローンがお得になります。まとめると以下の図のようになります。
また、逆に金利が低いときは預金や保険は消費者にとって不利で、金利が高いときにはローンが不利です。
様々な金利を決める2つの基準金利
では、預金、保険、ローン...etcの金利はどうやって決まるのかを解説したいと思います。
世の中のありとあらゆる金利を決める際に基準となる金利は、短期金利と長期金利に分けて2つあります。それぞれが何かということは必ずしも知る必要はありませんが、紹介はします。
- 短期金利の基準:短期プライムレート...銀行が一流優良企業に1年以下の融資/貸出を行う際の最も低い(優遇した)金利。
- 長期金利の基準:日本国債10年物金利...日本が10年間のローンを組む時の金利。リスクフリーレートとも呼ばれる。
では、それぞれがどのような金利を決定するか紹介します。言い換えれば世の中の金利のうち何が短期金利、長期金利に分類されているかを図でまとめました。
基本的に1年を超える期間金利が見直されないような商品は長期金利に分類されます。終身保険、個人年金保険の利率は刻々と変わりますが、長期金利に分類されます。また、所謂変額の終身保険は投資信託に準ずる商品になり、金利商品ではありません。
一方、変動金利のように半年~一年で金利が見直されるものやそもそも借入期間が短いことが多いカードローンは短期金利で決定されます。
また、上記の表にない金利が高めに設定されているキャッシング、カードローンの一部は法規制などが基準になります。
個別の金利を決める要因
長期金利や短期金利がどのように決まるかについては後述しますが、ここでは個別の金利がどのような要因で決まるかを紹介します。貰う金利に関しては設定されているものなので変化させることは無理ですが、今後ローンを組みたいと思っている場合、以下の項目を参考に検討することをお勧めします。
- 信用力...借金を期日までに完済できるかどうかの可能性です。信用力が高ければ金利が下がります。企業でも個人でも収入やその安定性、確実性が高ければ信用力が上がります。また、完済できるかがポイントなので借入額に対しての収入の割合も重要になります。
- 担保...担保とは借金を返済できない場合(債務不履行、デフォルト)した場合に明け渡すものを指します。担保があれば、金利が下がります。住宅ローンや自動車ローンがキャッシングやカードローンより低いのは担保が存在するからです。
- 期間...一般に借入期間が短ければ金利は下がります。なぜなら、借入期間が短ければ完済される可能性が高いからです。一部キャッシングやカードローンでは1年以下で期間が短い方が金利が高いケースがあります。このような場合でも、期間が短いため利子の総額は低いことが大半です。
基準金利(短期プライムレートと長期金利)の決まり方
次に、基準となる金利がどのようにして決まるかを解説したいと思います。これは、預金など金利を使ってお金を貰う場合も、ローンなどで金利を使ってお金を支払う場合どちらにおいても知っておくべき点です。
短期プライムレートの決まり方
短期プライムレートはO/N無担保コールレートによって決められます。O/N無担保コールレートとは銀行同士が翌日まで1日だけお金を借りる時の金利でO/Nはオーバーナイトの略です。日銀によって強く操作されることから政策金利とも呼ばれます。
専門用語が出てきて難しくなった感じがしますが、結局は日銀が決めているということです。まずは、実際にそれぞれの推移を1985年からの月次グラフで紹介したいと思います。
グラフで見ると実際にかなり相関していることがわかると思います。特に近年は政策金利が下がりすぎてしまったため、短期プライムレートは追従できず、1.5%程度の差を保って推移しています。
どうして短期金利が上がるか/下がるか
結論から言ってしまえば、前述の通り短期金利は原則日銀によって決定されています。そこで、ここでは日銀がどんなとき、金利を上下させるかを紹介します。
- 金利を上げるとき...景気が良くなっているとき。例としては、1987年から1990年のバブル期、2006年から2007年のリーマンショック直前期。
- 金利を下げるとき...景気が悪くなっているとき。例としては、1985年から1987年のプラザ合意後の円高不況期、1990年以降の日本バブル崩壊(1990年)、ITバブル崩壊(2000年)、リーマンショック(2008年)。
また、更に言えば、概ね名目GDP成長率と一致することも以下のグラフから読み取れると思います。近年は金利が0%で張り付いてしまったため相関が薄まっているのも事実ではありますが。
GDPがよくわからなければ、名目GDPとは国の一年間で稼いだお金だと思ってください。従って名目GDP成長率とは一年間で稼ぐお金が何%増えたかということです。
長期金利の決まり方
次に長期金利の決まり方を紹介したいと思います。結論から言うと、基本的に短期金利と同じように、景気上昇局面では上昇、景気下降局面では下落します。ただし、唯一の違いは長期金利は原則短期金利の変動に先行して動くということです。
近年無担保コールが動いていないのでわかりづらいですが、実際に以下のグラフで過去には長期金利が無担保コールに先駆けて上下動していることがわかると思います。
また、注意点としては長期金利は無担保コールの動きを予測して動くため、無担保コールの動きを読み間違えて動いていることもあることです。
長期金利が上昇したら変動金利ローンは借り換えるべき
基準金利の変動から1ついえることは長期金利が上昇したら、変動金利ローンは固定金利のローンに借り換えを検討すべきということです。
先ほど述べたように長期金利の動きが必ずしも正しくないのですが、長期金利が上昇すると短期金利が上昇、ひいては変動金利のローンは金利が上がる可能性が高いからです。あくまで検討すべきというのは、短期金利がどこまで上がるかという予想次第なのとローンの残り年数によって固定金利の金利が変わるためどちらが得なのかは場合によるからです。
低金利時代の概要
ここまでで、金利の基準となる短期金利、長期金利の推移のグラフを見ていただきました。特に長期金利と無担保コールのグラフからここ数年は異常ともいえるほど基準となる金利が低いことが分かると思います。この背景には日本銀行による異次元金融緩和が行われているという事実があります。
そもそも金融緩和とは?
まず、金融緩和とは何かを簡単に説明します。「金融緩和=金利を下げる」ことです。中央銀行(日本では日本銀行)がこれを行うことで景気向上を目論見ます。なぜ金利を下げることで景気が向上するかを知りたい方は以下の記事、youtube(世界最大のヘッジファンド創設者、レイ・ダリオ氏による解説)を参考にしてください。
また、先ほどの金利の推移を使うと1998年以降行われてきた金融緩和”ゼロ金利政策/量的金融緩和”が簡単に読み取れます。
赤丸で示した1998年から今に至るまでの期間のほとんどで無担保コールが0%になっていることがわかります。ちなみに2006年に一旦0%でなくなっているのはゼロ金利政策を解除したものの、リーマンショックで再びゼロ金利に戻ってしましました。
また、量的金融緩和と呼ばれるのは、大量の資金で無担保コールの金利を0%にまで押し下げるまで買い込むためです。
では、本題の異次元金融緩和とは何かについて解説したいと思います。
異次元金融緩和の正体
異次元金融緩和とは今の日本銀行総裁、黒田東彦総裁のもと行われている金融緩和です。量的質的金融緩和とも呼ばれます。では、何が異次元なのか以下のグラフを使って私の見解を述べたいと思います。
青丸で囲ったところ、2013年黒田総裁着任以降日本国債10年物の金利(長期金利)は名目GDPの成長率を下回り続けているのです。このようなことは1985年以降では、バブルによる急速なGDP成長を遂げた時にしか起こっていないのです。
先ほど述べたように原則、無担保コールが名目GDP成長率と理論上一致するとされており、長期金利はそれよりも期間が大幅に長いため、名目GDPの成長率を上回るのが基本です。従って異次元金融緩和の正体とは、長期金利まで異常なほどの低水準に押し込む政策だと私は考えています。
あくまで私の考えとするのは、この状況は異次元金融緩和(別名:量的・質的金融緩和)の一部の側面でしかないからです。
詳しく知りたい方向けに、量的緩和については先ほど説明したため質的緩和に関して解説します。質的緩和では長期国債の買い入れ対象拡大しました。これによって多様な金融資産の買い入れを出来ることになったのが質的緩和と呼ばれる所以です。そのため先ほど述べた私の見解は元の定義から若干拡大解釈したものになります。
マイナス金利政策と預金/保険/ローンへの影響
異次元金融緩和にかかわる政策の1つとしてマイナス金利政策があります。これは短期金利、長期金利で分ければ2つの側面があるものと考えていいでしょう。
- 無担保コールの金利(短期金利)をマイナスにする...市場では大きな衝撃となったマイナス金利。これによって基準金利となる短期プライムの金利は下がらなかったため、短期金利の商品には影響がほぼありませんでした。
- 長期金利の金利をマイナスにする...世間でいうところのマイナス金利。以下で紹介する出来事をもたらしたのはこのマイナス金利です。
実は、この政策が及ぼした影響はかなり大きなものが2つあります。消費者にとって良い影響、悪い影響が1つずつです。
- 住宅ローンの金利の更なる低下(良い影響)...後のグラフ参照。
- 終身保険の保険料値上げ(悪影響)...会社、商品によりますが、ほとんどの会社が2017/4/1以降の終身保険が10-30%値上げになります。
また、今は紹介しませんでしたが、大手銀行の預金金利が0%になったという事実もあります。ですが元からほぼ0だったためあまり大きい影響ではないと思うので省きました。
住宅ローンに関しては実際に金利の推移を見てもらうと分かりやすいので以下のグラフを見てください。
フラット35というのは、21年以上が借入期間の固定金利住宅ローンで最低金利水準のローンです。スプレッドとは金利差のことで、今回ローンスプレッドとしているのは10年国債とフラット35の金利差です。
紫丸で囲ってもらったところを見ればわかる通り、マイナス金利導入前後からフラット35の金利が大幅に低下し、スプレッドも一気に縮まったのです。
低金利時代は終わるか?
今後の金融政策
今後の金融政策でキーワードとなるのは財政出動です。実は、トランプ大統領誕生以前から、ヘリコプターマネー(通称:ヘリマネ)の噂や補正予算などで財政出動はキーワードとなりつつありましたがトランプ大統領就任により一気に、今後の金利を読む上でのキーワードとなりました。
では今多く出てきた聞きなれない単語に関して説明したいと思います。
財政出動、ヘリコプターマネー
財政出動とヘリコプターマネーについて簡単に解説したいと思います。
- 財政出動...国が公共事業や減税を通じて、需要を生み出すこと。これらの政策は補正予算と言って国が(赤字)国債を発行することで行われることもある。
- ヘリコプターマネー...国が財政出動するための資金を、中央銀行がお金を発行することで提供すること。
これらについて最も大事なのは、いずれの政策も金利上昇が見込まれるということです。
その理由は2つあります。1つ目はどちらの政策もGDP成長が見込めるからです。先ほどの金利の変動理由と合わせると、長期金利主導で金利が上がると見込まれます。2つ目はいずれも国債を発行しなくてはならないことから、国債の供給増=国債価格低下=金利上昇が起きると考えられるからです。
ちなみに国債に限らず債券全般の価格と金利は逆相関にあって、金利が低下するということは国債価格上昇を意味します。単純に考えれば、低い金利なのに国債を買う(国にお金を貸す)ということは高い買い物をしているように思えるというのと一緒です。逆に高金利でお金を貸すのは安い買い物をしている気分になると思います。保険や預金でも金利が高いものを求めるのは安い商品を探しているのと実質同じことです。
トランプ大統領と金利動向の関係
トランプ大統領誕生によって米国では、財政出動が大きなテーマになりました。そして実際に、米国金利はトランプ大統領誕生直後から大幅に上昇しました。以下のグラフを見ると分かります。
一方、日本の金利は、日本銀行のイールドカーブ・コントロールにより低位安定していることもわかります。イールドカーブ・コントロールというのは2016年9月から日銀が行っている、実質、長期金利を含む全ての国債の金利を日銀の一存で決めるという政策です。
この状況は後半年は続くと思われますが、その後は日米の金利差を縮めていく形で金利が上昇していくと思われます。実際に、安倍首相とトランプ大統領の会談では財政出動での協調もテーマとなっていました。
2017年~2020年の金利の動向
結論から言えば、金利にとって一つ節目となるのは2.5%だと思います。これには2つ理由があります。1つ目は日本銀行は物価上昇率(インフレ)2%を目標としており、早ければこれは2018年内に達成される可能性があるからです。2つ目は、その際の経済の実質GDP成長率は過去の日本の成長率から0.5%-1%だと考えられます。
以上の2つを合わせると名目GDP成長率は2.5%-3%が見込まれます。すると基準金利の決まり方から短期金利、長期金利は2.5%まで、金融緩和の解除と共に2019年内に上昇するのではないかと考えられます。さらに言えば、先ほどの異次元金融緩和の解説を逆手に取れば、異次元金融緩和を止めるだけで現行の名目GDP成長率の1~2%を超えることは確実なのがわかると思います。
ちなみに名目GDP成長率=インフレ率+実質GDP成長率です。逆に言うと実質GDP成長はインフレを除いた時のGDPの成長率です。
東京オリンピック後の金利の動向
詳しく書くと長くなってしまうので、簡単に大筋だけ紹介します。
私の考えでは、金利は3%程度では止まらない可能性が高いと思います。ここでは結論を急がず、物事を順序立てて説明したいと思います。主に私が金利が3%では止まれないと考えるのは、日本国家としての財政破綻の可能性がいよいよ現実味を増してきているからです。
日本の債務残高対GDPはほぼ限界に近い
まずは、世界各国の政府債務の名目GDPに対する割合の推移グラフを紹介します。少し話が大きいので簡単に言えば、国の抱える借金は国の収入の何倍かということです。
見ての通り、財政破綻をしたギリシャよりも高い水準で推移していることがわかります。もうすぐ政府債務残高がGDPの250%=2.5倍になろうとしています。
この水準がどのくらい高いものかというと、住宅ローンを個人が借りるときを考えればわかりやすいと思います。個人が住宅ローンとして組める限度額は通常、年収の250%-300%が上限です。個人と国では違うといえど、この債務残高はかなり高いことが伺えると思います。更に言えば住宅ローンは家計が黒字なのが過程なのですが、日本国家の場合は赤字です。
このデータを見てすぐ「破綻だ」となっては困るので、2つの事実を述べたいと思います。1つ目は財政破綻をする国というのは直前で財務残高が跳ね上がり破綻するケースがほとんどです。ギリシャ、トルコ、アルゼンチン、アイスランドなどはそうで、幸い今のところ日本は該当しません。2つ目は、債務残高が高い=破綻するとは限らないのも事実です。トルコやアイスランドは債務残高が対GDPで100%を超えないまま破綻しました。アルゼンチンに至っては50%も越していません。
日本国債の格付けも投機的水準と紙一重の状態
国債は債券という証券の一種なのですが、通常債券には債務不履行のリスクを示す格付けというものが存在します。通常、国債など信用力の高い債券は安全という格付けを受けます。ですが、債務不履行の可能性が高まると投機的格付けとなり、債務不履行があれば債務不履行の格付けを受けます。
現在日本国債は、1990年初頭には最高に安全だという格付けを受けていたのですが、今や安全という格付けのうち最低から一個上のランクを付けられています。そして私はこれが、下手すると早くて2018年には安全のうち最低もしくは、投機的格付けに代わると考えています。
この根拠としては、安倍首相が掲げる2020年度プライマリーバランス黒字化に対して疑問を抱くからです。プライマリーバランスの黒字化とは簡単には国の収支を黒字にしましょうということです。
2015年度の日本の赤字は18.3兆円で、歳出(支出)に対して25%程度赤字です。これが2020年度に黒字になるとは考えづらいでしょう。もし、黒字にするとしても2018年あたりから具体案が出てきていなければ達成は困難で、この目標が頓挫すれば少なからず、安全のうち最低の格付けに代わると思われます。もし、投機的水準まで格付けが下がれば、債券の買い手が消えるのに加え、売り手も出てくることで国債の金利は相当に上がるでしょう。つまり、国債がデフォルトする懸念分が金利が上乗せになる可能性があるということです。
ただし日本が本当に破綻をすることはない
ここまで日本の財政の惨状を述べましたが、実際に日本が財政破綻は日本が選ばない限り起きないと思います。なぜなら、過去に財政破綻した国は外貨建ての債務が多く、それが通貨安により返済額が増えてしまって破綻したのですが、日本企業も含めそうなるほど外貨建ての債務が多くありません。
ですが、破綻はしなくても円の価値が大幅に下がり、インフレ、ことによればジンバブエよろしくハイパーインフレが起きる可能性が極めて高いです。そうなれば、先ほど述べたように基準金利を決める要素の名目GDP成長率にインフレ率が含まれていることから金利も今からでは信じられないほど高い水準になることが予想されます。
帰結としては、日本の財政難が市場で織り込まれ始めれば10%を超える金利もありうるということです。ちなみに、市場関係者は常にこのリスクが頭にありますが、それよりも直近の他のリスクに思考を奪われていたり、日銀による強力な国債買い入れが現在金利が低位で推移している理由だと思われます。
出典
*1:日本銀行からデータを抽出
*2:IMFと日本銀行からデータ抽出
*3:日本銀行と財務省からデータ抽出
*4:財務省とIMFからデータ抽出
*5:財務省とFederal Reserve Economic Data | FRED | St. Louis Fedからデータ抽出
*6:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/007.htm